ホタルの過去1(黎明編)

「なんだよっ!・・・何にも、何も起きてねえじゃあねえかよっおぉぉぉあぁ!!」

2016年の10月某日。
6畳の和室に大音声が響きました。

私は生まれて初めて慟哭したのです。

怒りと言う火をくべられた性欲は轟々と燃え上がり、己が身を焼き尽くし、ティッシュに包まれた灰を残しました。



切っ掛けは丁度1年前の同じ日。
30代に突入した私はある衝撃的な事実に気付いてしまい、驚いたのです。涙無くして語れませんが端的に言えば、

今まで彼女いた事ないんじゃねえ・・・俺?

と言うことでした。
いや気付いていたのに、知らぬ振りを決め込んでいただけなのでしょうが。

ともかくです。

突然やってくる焦燥感。文字通りに身を焦がすような激情にかられてやったのがパソコンに向かうことでした。

根暗な奥手男子。草食系を地でゆく私にはナンパなど無理な話。職場には男がひしめき、女は男勝りな厳つい方ばかり。

卑しくも可愛い子が好きな私には職場の女性は、ちょっと無理。

そして、グーグル先生に聞いた結果がそう・・・そうなのです。オナ禁です。

始めて知ったオナ禁の効果は目からウロコ。信じられない事ばかり。私は夢中になって体験談を読み込んだのです。
なになに・・・電車効果?逆ナン?さ、さん、ぴ?いかん鼻血がっ!
要はあれかっ!
モテるようになるってことかっ!

私は飛び付きました。
お恥ずかしながら長年に渡り毎日1回の自家発電に勤しんでいた私は、生命の神秘、人間の秘密その全てが、ネットの海から拾い上げた情報から分かったような気がしていたのです。

これで人生勝ったわ!(*´∀`*)

と本気で思っていたのです。
早速、その日から私は息子に触れることを一切止めたのです。

1週間。ワクワクしました。ムラムラしました。
1ヶ月。ドキドキしました。ムラムラしました。
半年。イヤイヤ、まだまだこれからだ。たまにムラムラしました。
そして1年・・・。

私はそう、私はキレました。


こうして冒頭の慟哭へと至るのです。



何もない。
見知らぬ美人に声をかけられることもなく。
電車に乗っても寄ってくるのは、おじ様ばかり。
本当に何もない。
1年。
365日。

こんだけやっても何もない。
オナ禁に意味などない。

それが当時の私が至った結論だったのです。

私は怒りに身を任せ出しきりました。それはもう、1年分ですから。手を変え品を変え、出しまくったのです。

残された灰を見ながら、

「・・・やべー、1年無駄に過ごしたわ」

そう呟いて、私は眠りについたのです。

なんか長いので分割します。
ホタルの過去2へ続く。